2nd Engineer

永遠 / ZARD

[showTitle JBDJ-1030]
「君と僕との間に永遠は見えるのかな」

【Haruka’s Voice】

アナログオーディオの凄さを知った

この曲は、最初は単なるデモテープ的な仕上がりだった(と思う)んですが、途中から会社が力を入れてきました。きっとドラマ「失楽園」のタイアップが決まったからだと思いますが。

ZARDにはめずらしく、アレンジは確かこれだけしか無かったと思いますが、少々のバージョン違いが数多く存在します。シングルやアルバム、ベストアルバムなどは全部バージョンが微妙に違います。目立つ所では、間奏以降がモノラルかステレオか、という大きな違いがあります。

マイケル・ブラウアー(Michael Brauer)というアメリカのエンジニアがいます。(結構凄いエンジニアです。ディスコグラフィがあります。ちょっと偏屈な所のあるエンジニアですが・・・。まあエンジニアは皆どこか変わってます。(^ ^);)氏にミックスをお願いする事になりました。(ベストアルバムでいいミックスしてもらっていましたから、その流れで。)

アメリカにテープを送る事になるんですが、アメリカでは当時多くのスタジオがまだアナログのテープレコーダーを使っていました。(日本ではデジタルレコーダーが主流でした。)ですので、デジタルのテープからアナログのテープへコピーする必要が出てきたんですね。

その作業をしていた時に、非常に驚いた事があります。デジタルテープの音と、デジタルテープからアナログテープへコピーした音を同時に聴きくらべることが出来るんですが、両者の音が明らかに違うんです。違うのは当たり前だと思っていました。アナログだからちょっと劣化した音になるかもしれないなというくらいに考えていたんです。ところが、アナログの音はスピーカーの真ん中で、まさにそこで坂井泉水さんが歌っているように聞こえてきます。抜けてくるんです。こっちへまっすぐ音が進んでくるんです。デジタルではなぜかそうは聞こえません。

おかしいですよね!だって、もともとデジタルにレコーディグされた音なんですから、それがコピーされても、良くなるはずは無い。常識的に考えれば、良くて”ああ、同じ音だね”というぐらいです。しかし、実際は明らかに”いい音”になって出てきました。”いい音”というのは大変主観的ですから、実際に物理的現象からみたら劣化しているのは間違いないでしょう。しかし、音楽(あるいは音)というのは主観で聴く物ですから、劣化していようがなんであろうが、”いい”と感じる音楽や音であったほうが”いい”訳です。

本物のアナログ機器は凄い!それを思い知った出来事でした。(高価なアナログ機器じゃないと駄目なんです、これが。安物はやっぱり安物の音がします。ブラインドテストしても分かりますよ。)

ところで、この曲には間奏以降が「モノラル」のバージョンと「ステレオ」のバージョンがあると先に書きました。(その他、イントロにピアノが入った物などもあるので、一体いくつあるんでしょう?)なぜ「モノラル」のバージョンがあるんでしょう?実は、最初に坂井泉水さんがマイケル・ブラウアーのミックスを聴いたのは、インターネットで送られてきたMP3のモノラルファイルの音だったんですね。そのときのインパクトが凄かった様です。後にアメリカからステレオのテープが届いたのですが、それを聴いたときのインパクトはそこまででもなかった。ですから、最初に感じたインパクトを出す為にモノラルにしようという事になったんだと思います。私も、後にスタジオ脇のカウンターで泉水さんたちがマイケルのミックス(ステレオ)を聴いていた時に顔を出したんですが、曲を聞き終わった時に『すっげ~、すんごく格好いいですよ、坂井さん!』って興奮しながら思わず言っちゃいましたから。それくらいインパクトは私でも感じました。(とは言っても、それが”モノラルだから”というのとは直結しないような気はするんですけれど・・・・。)

そんなこんなで、この曲も大変濃い思い出があります。