27 Stories

音楽で綴る、全27話のストーリー

-第9話-

優しくなりたい

豆知識・豆コラム

「音楽のジャンル」

「ヨシダさんはどんなジャンルの音楽をやってるの?」と尋ねられることがよくあります。当然のご質問だとは思うのですが、実はいつも閉口してしまいます。自分自身では、あまりジャンルというものがよくわからないからです。

ということで、ジャンルってなんだろう?どう定義されるのだろうと思い、調べてみました。

「ジャンル(フランス語: genre)とは、芸術表現群をある一つの側面から客観的に分類したものをいう。」

とWikiには書かれています。なんとなくはわかります。

音楽のジャンルはどう定義されるのでしょうか?

定義は見つかりませんでした。

Wikiに掲載されている"音楽のジャンル"を数えてみると、なんと「373」ありました。ポピュラー音楽のジャンルだけでも「152」でした。ははは…。
ちなみに、私が1998年に制作した「TOMO」というアーティストの音楽は、当時「エスノポップ」(エスニックな香りのするポピュラーソングという意味だそうです)と名付けられていました。Wikiには載っていません。ということは、世の中にはかなりのジャンルが存在しそうです。

となると要は、ジャンルというのは「何でもあり」ということになりますね。「付けたもの勝ち」あるいは「提供側のウリ文句の一つ」とも言えるかもしれません。

ただ、大きく分ければ

  • クラシック音楽
  • ポピュラー音楽
  • 民族音楽

という3つに集約されるようです。(あくまでも西洋音楽が中心の概念ではありますが)


  • 「クラシック音楽とは、古典かつ芸術性の高い音楽である」
  • 「ポピュラー音楽とは、その時代の流行歌(曲)である」
  • 「民族音楽とは、土着の生活から生まれるその地方地域の音楽である」

と極論もできそうです。


「名乗ればいい」という近代のジャンル分けは別として、本質的なジャンルについて考えてみると、それには時代と地方性(地域性)、というものがある程度関係あるのは間違いなさそうです。付け加えるなら「どんな人(達)が、どんな人(達)に向けて」という性質でしょうか。

例えば、よくわかりやすい例で言うと「アルゼンチン・タンゴ」とか「デトロイト・テクノ」「フィラデルフィア・ソウル」など、地域名が入っているようなジャンル。これらは、その地方で生まれたということは明白でしょう。(もっとも「タンゴ」「テクノ」「ソウル」とか言われれば、その音楽様式も想像はし易いですけれどね。)

地域名は入っていなくても、一定地域から生まれ始めた、あるいは一定の趣向の人たちが好んで生み始めたということは言えるのではないでしょうか。当然そこには、「その時」という時代性が反映されるのは間違いないとも思うのです。

クラシック音楽でいえば、「ルネッサンス」「バロック」「古典派」などの多数の様式がありますが、これは明らかに時代ごとの区分と言えるかもしれません。

想像するに、「その時代その場所で、たまたま誰かがその手の音楽を生み出し、それを聴いた別の人が真似してあるいは影響されて、同傾向の音楽が数多く生まれ演奏された」ということでしょう。

でもって、ジャンルというのは大抵産んだ本人ではなく、他の人が付けているということです。本人は「こんな感じが好きだから」「自然に出てくるから」としか思っていないでしょう。


これは私の勝手な見解ですが…
”昔だったから、ジャンルって存在し得たのかな〜”と思うのです。

エジソンが蓄音機を発明(商品化)したのは1877年。(ちなみに、世界ではじめて音声記録装置を発明したのは、1857年、レオン・スコットの「フォノトグラフ」だそうです)。
それまでは、「録音」という方法がなかったのです。それに、蓄音機が一般民衆にレコードなどで広がるのはそれから何十年も後の1940〜50年代です。
つまり、音楽は「生」が主流。記録にするなら譜面しかなかったのです。譜面をそのまま演奏する演奏家が居なければ、過去や別の地域・人から生まれた曲を聴くことはできなかったといえます

クラシック音楽の時代に人々が耳にしたのは、あの手の曲がほとんどだったわけで。
レコードが普及するまでは、近所のクラブでJazzの生演奏を聴いていたわけで。
それが、当時の人にとっては新しく心地よい音楽だったから、多くの人が虜になって。
だから、それ以外の音楽は演奏される場面に出くわすことがなくて。

その時代、その場所、その人(達)。

ところが、レコードが普及したことで、過去の曲や他の地域の音楽が聴けるようになると、音楽家が”新しい”と感じる要素を取り入れるようになるのは当然で。
日本独特の節回しや曲進行に、ヨーロッパやアメリカの音楽の要素を組み込んで出来上がってきたのが、歌謡曲でしょうし。どんどん複雑化していくわけです。
ましてや現代、印刷物や通信で世界各地がつながり、さらにさらにインターネットのお陰でありとあらゆる情報がリアルタイムに世界中に流れる様になると、もう複雑というかカオスというか…。

そうなると、
「その時代、その場所、その人(達)」
という定義は崩壊します。

「インターネットで世界がつながり、様々な情報があふれる時代」
「世界中のあらゆる場所で」
「あれもこれも好きで興味がある人(達)」
が作るジャンルって、ある一定の様式が存在するとは思えません(笑)


これってきっと、音楽だけに限ったことでは無いんでしょうね。


余談ですが…。
「J-POP」というジャンル、これはとあるラジオ局が付けたものだったと思いますが、80年代あたりまでは歌謡曲と言われてきたものを、ロックやファンクやジャズやいろんな要素が混交し散らばるようになってきた音楽を「ひとこと」で言い表してしまうという暴挙(笑)に出てくれたおかげで、私たちは余計なことは考えずに「はい、J-POPです」と言えるようになりました。「歌謡曲」というのは恥ずかしい、かっこ悪い時代でもありましたし。 まあ、当の本人たちは「J-POPをつくっています、歌っています」とは言いませんよね。使うのは企業側。企業のためのジャンルです。

[出典]

  1. ジャンル
  2. 音楽のジャンル
  3. ポピュラー音楽のジャンル
  4. エジソン蓄音機
  5. フォノトグラフ

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