シンセサイザーの変遷 ハードウエアシンセ編 [Monthly Report 2014-07]
イベントにライブ出演することになった。といっても、まだ確約を頂いているわけでもなく、詳細はまだ打ち合わせていないけれど(ボツる可能性も多分にあります)。まったく別の話から頂いた話で、縁とは不思議なもんだなと思う。しかしこれは自分だけでは成し得なかったことで、応援してくれる人のおかげなのだと思うと感謝せざるを得ない。
詳しくは決まったらこのページやらFaceBookやらで告知するとは思いますが…。簡単に言うと、ある会社の年に一度のイベントがあり、その昼休みに余興みたいなもの、つまりライブをやってもいいという話。60分あるから好きなだけやっていいよ、ステージは簡易だけれど用意するよ…っという感じでおっしゃって頂いている。
ちなみに、バンドもナシの私一人と楽器とコンピュータでの単独ライブとなる予定。
で、そのための曲作りなどに挑んでいる最中、ライブ用の機材の不足などもあり久しぶりに今の楽器に目を通しているうちに、今まで使ってきたキーボードのことを思い出した。そこで今回は私のシンセサイザーの変遷について書いてみようと思い立った。とりわけ今回はハードウエアシンセサイザーについてで、次回はソフトウエアシンセサイザーwithDAWの予定。
■私のシンセサイザーの変遷 ハードウエアシンセ編
<YAMAHA DX21>
私が最初に手に入れたシンセサイザーは、YAMAHA「DX21」というデジタルシンセサイザーの往代の名機「DX7」の孫みたいなもの。同時発音数8音、モノラル、簡単なタッチセンス付きの鍵盤。DX7の鍵盤はかなり良い出来で、「弾いている感」がしっかりあるのだが、あの機構はやはりDX21のような廉価版のキーボードへの採用は無理だったようで、鍵盤風のボタンに近かった(といっても当時の他のキーボードよりは、はるかに良い出来だったと記憶している)。
私はデジタルシンセサイザーからシンセサイザーの世界に入った。だから、直感的な操作や音作りを経験していないので、シンセサイザーの奥深さに困惑(?)もしていた。しかし、いろんなバンドのキーボードパートのコピーや自作の曲作りを通して、音楽をつくり上げることに深く興味をもつきっかけともなった。
<YAMAHA SY77>
この後、リズムマシン(YAMAHA「 RX5」)やサンプラー(YAMAHA 「TX16W」)を手に入れることを経て、YAMAHA「SY77」というワークステーション型シンセサイザーを手に入れた(必死にバイトしたことを思い出す)。ワークステーション型シンセサイザーとは、それまでの単体シンセサイザー内部にMIDI録音機能(シーケンサー)が搭載されるているタイプのシンセサイザーのことである(他にも残響付加などのエフェクター機能などが付加されている)。これ一台でMIDIレコーディングが出来る。
SY77の鍵盤はDX7譲りで文句なし。サウンドもリッチで充分なクオリティで大変満足した機種でもある。このSY77で、ライブ(当時は私はバンドでドラムを叩いていたので、SY77には自動演奏してもらった)や曲作りに励んでいた。一気に曲作りがしやすくなり、音楽を創る喜びを存分に教えてもらった機種でもある。
さておき、シンセサイザー関係はとにかく価格が高い!(アマチュアレベルで)他の楽器と比べると明らかに「お金持ちかバカしか出来ない」楽器であった。私は後者…。
<Roland JV-2080 with D-20>
スタジオエンジニア(ミキシングエンジニア)になりたくてプロの世界に足を踏み入れ、もっと高価な機材を目の当たりにもし(もっともプロの世界に行けば、シンセサイザーなどのデジタル楽器の価格は明らかに安い部類なのだが)、プロの音を聴き、プロの音作りを学んでいくと、次第にいろいろ捉え方も変わってくる。
1998年、次に私が手に入れたのは借り物のRoland「D-20」(結果的に当人は処分したいということで後に譲り受けた)とMIDI音源Roland「JV-2080」。D-20は鍵盤(インターフェイス)として使うだけの、いわばMIDIキーボード。ほぼ同時にAKAIのサンプラー「S3000XL」なども手に入れている。音源と鍵盤を切り離して考えるようになった頃。鍵盤でMIDI音源を鳴らし、その音をミキサーで加工して最終的な音につくり上げるというプロレコーディングのやり方をするようになっていた。
当時このやり方でのライブ演奏は、一般的には経済的・技術的な理由で不可能に近かっただろう。私はこの頃はライブを想定していなかったので、それで問題はなかった。
<ソフトウエアシンセサイザー>
時代は移り変わり、(私の10年近くの耐え難いブランクの間に)世間ではさらにデジタル技術は進み、普通のコンピュータの中にシンセサイザーが入ってしまう時代になっていた。ソフトウエアシンセサイザー(以下ソフトシンセ)といわれる、鍵盤もハコも何も物理的物体を持っていないシンセサイザーが登場するようになってきた。コンピュータのハードとソフトの進化に追従するように当然のように現れてきたシンセサイザーで、今風の言葉を使えば「アプリ」だろうか。
私が手に入れたのは、Apple Macintosh用の音楽制作ソフトウエア(デジタルオーディオワークステーション:DAW)の「Logic」に付属していたもので、特にソフトシンセが欲しくて入手したわけではかった。しかし思いの外クオリティが高く、そして扱いやすく、これだけでかなり使えるバラエティ豊かな音源となった。実際、今の音楽制作ではほとんどこの付属しているソフトシンセだけで行っている。(それについては次回書いてみようと思っている)
<Roland RD-700NX、Roland JUNO Gi、KORG i3>
ソフトシンセのクオリティの高さ故に、再現性(演奏表現力)に不満が出てくるようになった。とりわけピアノ音色は明らかに細かいニュアンスがD-20(まだほんの数年前まで現役で使用していた)では出せない。故に、どうしてもピアノタッチの鍵盤を必要とする様になり、清水の舞台から飛び降りてみることにした。それが今メインで使っているRoland「RD-700NX」。これは厳密には「ステージピアノ」というジャンルで、シンセサイザーとは定義されていない。だから音作りは基本的に出来ない。
最初は、鍵盤さえピアノタッチであれば音はソフトシンセで何とかなると思っていたので、手の届きやすいMIDI電子ピアノを探していたのだが、店頭で試奏したRD-700NX(正確には、中身が同じ電子ピアノ)のピアノの音と鍵盤のタッチの秀逸さに驚愕し、こちらを購入することに決めたという経緯がある。RD-700NXを手に入れたことで、様々な音楽表現を引き出してもらえるようになり、飛躍的に演奏能力や音楽への理解力などが深まった。
(いずれ書くかもしれないが、私が音楽へ復帰したきっかけを作ったのもおそらくこの機種かその前モデルのもの。)
そして、とあるアマチュアバンドの手伝いをするようになり、バンド用にRoland JUNO Giを貸してもらっているが、今のところ鍵盤としてしか利用していない。
つい先日、冒頭に述べたイベント出演をきっかけに、1台中古のキーボードを手に入れた。KORG「i3」という1993年に発売されたシンセサイザー。もっとも、これが欲しかったのではなく、前述のように鍵盤を探していただけなのだ。まだ一度音を出してみただけだが、鍵盤もバッチリでシンセ音色を弾くにはとてもひきやすい(実は先のJUNO Giは私にはちょっと弾きづらい)。音は全く期待していなかったのだが、思いの外今でも使えそうな音色が多々ある。このキーボードは設計思想が面白く、シンセサイザーというよりは「自動伴奏装置」といったほうが正しいかもしれない。様々なジャンルの基本的なリズムや伴奏パターンが入っており、これと自分の演奏(手弾きから勝手にコードを分析してくれる)から自動的にバックの演奏をしてくれる。これはとっても楽しい「おもちゃ」だ。1時間ほど夢中になって遊んでしまった。
■道具か楽器か
シンセサイザーと電気・電子・デジタル技術の発展とは、切っても切り離せないものだった。だから、ついだれもが「技術」に目が行くようになっていく。「あれが出来る、これが出来る」「こんな音が出る」ということに翻弄されてきた。「道具(ツール)」としての存在のほうが大きかったように思う。
しかし、その技術もある程度成熟してきた昨今、一般的にもようやく「楽器」としての見方ができるようになってきたように思う。ビンテージと呼ばれるような機種は、当時新しい技術によって淘汰されてしまった機種でもあるが、再発見のように評価が高まっているものも多いらしい。さらには、その音の素晴らしさやブランド価値・希少性も相まって、現物を手にすることが出来ない多くのミュージシャンのために、回路レベルからシミュレートするソフトシンセも多く登場してきている。
私が鍵盤にこだわるようになったのも、拘れるだけの技術が出来てきたからなのは言うまでもなく。
技術が先か、表現が先か…。道具なのか楽器なのか…。そのバランス感覚を見失うと、間違った方向に行きかねないと思い、できるだけ冷静に現状を見つめようと思っている。
■後記
今回は私見をちょこっと述べただけなので、皆さんにとっては大した情報もなかったかもしれません。一般の方や初心者の方向けを想定していたのですが、どうしても熱が入ってしまい、説明も多くかなりの長文になりそうで適宜編集したのですが、それでも長く不明瞭になっていましました。ハードウエアシンセだけでこれですから、他の楽器や機材などのことを語り出したら…
ほとんど無用の長物の文章を最後まで読んでいただいたことに感謝します。
次回はソフトウエアシンセサイザーwithDAWの予定です。少しは上手に書けるでしょうか(^o^;)
注1)シンセサイザーとキーボードがごっちゃにして書いてありますが、厳密には定義が全く違います。またシンセサイザーも進化していく中でカテゴライズが難しいものもたくさんあります。その辺りの区分は「キーボーディストから見た楽器群の一般呼称」と捉えていただけると助かります。詳しくはWikiを参照ください。シンセサイザー – Wikipedia
注2)何の説明もなくMIDIという言葉を使っていますが…。MIDIとはごく簡単にいえば演奏情報(デジタル信号)を機器間でやりとりするための規格のこと。こっちのキーボードの鍵盤を弾いたら、MIDIケーブルでつながっているあっちのキーボードの音を鳴らすことが出来る、というような使い方が最も基本。その演奏情報を記録し再生することができれば、自動演奏が可能になる。詳しくはWikiを参照ください(詳しすぎるけれど…)。MIDI – Wikipedia
4件のコメント
おっちゃん
DX21!懐かしい〜!
DX7憧れたねー!
つい最近まで、DX7を、当時の躯体で使ってた人がいました。
もうデジタル機器と言うよりビンテージ楽器の部類でしたよ。
我が家には、KORGのT1がホコリをかぶって寝ていますが、
きっと音色データはとんでるな〜。
1度復帰してもらったことあるけど、
10年以上前やでなー。
Haruka
おっちゃん>
いつもサイトを覗いてくれてありがとう。
そういえばつい最近、歌謡曲系のバック(プロ)の人もDX7使ってたのをみた。II(ツー)の方じゃなくて、初代の。しっかりビンテージ機材だねえ。
KORG T1も好きなキーボードだった。高くて買えなかったけれどとても欲しいと思っていたよ。
おっちゃんのスタジオにも、かのPearlのドラムセットが復活したみたいだし、なんだか年代を感じるね〜。
おっちゃん
なんていうか、古いものって、その音色だけじゃ無くて
その楽器を使っていた当時の記憶みたいなものが加味されるから、
他の人にとってはただの古い音が、
想い入れのある人にとっては凄く気持に響くものがあったりして、
記憶と音が繋がってんだよね〜。
バンド始めた頃の記憶自体が、もう20年もの〜30年もののビンテージだからね。
でも、自分もビンテージものになっちゃうのはまだまだ先にしいたいね。
Haruka
うわぁ〜、いい事言うなぁ(・∀・)
そのとおりだよね。
だから楽器が音を出してるんじゃなくて、人が音を出してるんだって思います。
我々はまだまだ現役でしょ。バリバリこれから味のある演奏ができるようになるってもんですよ。きっと。
と信じたい(^o^;)