2nd Engineer

TODAY IS ANOTHER DAY / ZARD

[showTitle JBCJ-1009]
泉水さんのプロデュース力が発揮された至極の一枚
アンディージョーンズのミックス曲も聴き逃せない

【Haruka’s Voice】

正直、辛かった〜

私にとって初めてのアルバム作品への参加です。ZARDの場合、シングル先行で作られている事が多いですから、すでに数曲は存在している所での私の参加になりました。参加っていうと格好いいですが、要するに、そこから仕事に入りましたということです。

シングル「マイフレンド」が終わるかどうか位からアルバム制作になっていたと思いますが、まだ仕事に慣れていなかったころですので、このアルバムは”ただ苦しかった”という思い出が残っています。48時間以上も続く仕事(アシスタントエンジニアというのは時々、寝る暇もありません)、一ヶ月も家に帰れない状態、帰ってもただ寝るのが精一杯という生活だったことを覚えています。会社へは家出セットと呼ばれていた、着替えの入ったボストンバッグを持って行っていました。

そういう生活が続いて、慣れて行くと…。人間って凄いんですね、寝ながら仕事できるようになります。

アシスタントエンジニアのレコーディング中の主な仕事は、録音ボタンを押す事。テープレコーダーの操作です。曲中のある所へテープを持って行き、再生して、録音する部分だけ録音ボタンを押す訳です。これをパンチイン(アウト)というのですが、これが結構神経使います。運動神経の勝負でもありますね。凄腕の人はそのタイミングを1000分の1秒(1ミリ秒)をコントロール出来るらしいです。(私は20ミリ秒くらいしか出来ませんでしたが…。)

で、そのパンチインしている間だけ寝るという技が出来るようになります。録音ボタンを押して録音が始まったと同時に眠り始め、パンチアウトする直前で起きてちゃんとパンチアウト出来ます。もし寝ていたら、その後に録音されている音が消されてしまう訳ですからとても緊張する場面なのですが、過酷な環境に入ってしまうと、それさえも出来るようになるんですね。

…という、作品には全く関係ない思い出があるアルバムです。

といって終わるのもなんですので、作品についてちょっとだけ触れておきます。このアルバムはとても変化に富んでいて、盛りだくさんといってもいいかも知れません。実験的な事を結構やってたりもします。「Love」や「Dan Dan 心魅かれてく」では、機械を使って無理矢理ヴォーカルを半音(だったかな?)アップさせています。(2コーラス目以降だけ。1コーラス目は通常です。)当時は”こんな事していいのかなあ?”と思いましたが、今考えてみればこれは凄い先見の明があったかも知れないと思っています。

Today Is Another Day」のイントロから聴かれるちょっと情けないギターのバッキングの音。実はディレクターさんがあくまでも仮で入れた音。「これがいい」という泉水さんのプッシュでそのままに。しかし、それが逆に曲の幅を広げる事に成功しています。

また、アンディージョーンズがミックスした「心を開いて」と「眠り」は、その音のクオリティの高さには脱帽です。とくに「眠り」は、シングルカップリング曲(「サヨナラは今もこの胸に居ます」に収録)だったとは思えない、見事な作品になったと思います。