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私のシンセサイザーの変遷 ソフトウエアシンセ with DAW編 [Monthly Report 2014-08]

イベントでのライブが確定し、その準備に大あらわのこのひと月ほど。パン屋としても出店することになっているので、その準備も重なり、本当に忙しい毎日。このイベントを想定したポピュラー調の曲を1曲、ちょっと激し目のロック調の曲を1曲創り、あとは誰もが知っている曲を2曲ほどアレンジしてお送りする予定(ほぼインストルメンタル)。この曲作りに大活躍するのが、今回のテーマ「ソフトウエアシンセ&DAW」である。

DAWとの出会い

DAW(デジタルオーディオワークステーション)と言われる以前、コンピュータベースのレコーディングツール(ハードディスクレコーダー)として脚光を浴び始めた「Digi desgin(現Avid)Pro Tools」。東京のスタジオ在籍中に、スタジオへの導入を薦めたことを覚えている。まだ基本的な機能しか搭載されていなかったし、当時のコンピュータ能力では到底完全なレコーディングには対応することは出来ず、ほぼエディットマシンとしてフル活用していた。

独立後、個人でも購入できる価格のPro Toolsが登場したので、即手に入れた。コンピュータパワーも増加しはじめ、ほぼレコーディングの全てをこれで行った。しかしながら、まだまともなソフトウエアシンセサイザーは登場していなかった(おそらく)ので、まさにレコーディングツールとしての位置づけだった。

 

ソフトウエアシンセとの出会い

(数年の療養期間を経て)5年ほど前、AppleのGarageBandを手に入れた。当時は”ソフトウエアのシンセなんてそういい音は出て来ないだろうし、マシンパワーが足りなくて使えないだろう”と思っていた。思い込んでいたといったほうが正しい。なので、少しGarageBandを使ってソフトシンセをかじったわけだが、気にもとめなかったというのが事実。

あるきっかけで音楽制作機材が必要になり、そこで”レコーディングツール”として使えるかもしれないと思ったApple Logicとオーディオインターフェイスなどを手に入れた。音源はかつてから持って(眠って)いた「Roland JV2080」と「AKAI S3000XL」を使用。実際、それで2曲ほど作った記憶がある。

試しに「付属のソフトウエア音源を使ってみるか」と思いたち、使ってみるようになった。ところが少し使い込み始めると、驚いたことがある。ひとつは”使い勝手の良さ”、もうひとつは”音の馴染みやすさ”である。

まるでエフェクターをインサートするようにソフトシンセをミキサーモジュールに差し込んで使うというやり方に馴染んでしまうと、これほど便利なものはない。さらにバーチャルならではの利点、「マシンパワーが許す限り無限数使える」という”制約がない”というストレスフリーさは、思いついた時にパッと音を出してみて確認してみるというやり方の私などにとっては、とても強力な武器となった。

リアル(ハードウエア環境)の場合、シンセをミキシングコンソール(ミキサー)に立ち上げレベル合わせをし、シンセ本体で音色を探して鍵盤を弾いてシーケンサーに打ち込み、その再生した音をミキサーで加工し、テープレコーダーに送り、そのリターンをミキサーでモニターし…ということをしていたわけで。それがDAWとソフトシンセの組み合わせだと「はい、モジュールを一個数クリックで作ります」「そこに好きなシンセを数クリックで立ち上げます」。レベルは最初っから合ってるのでいじることは無い(もちろんミックスバランスは取る)。「音色選びは同じ画面上で数クリックで」「シンセだけでは面倒な音作りも、無限に使えるインサートエフェクトをちょちょいと入れれば出来上がり」…といとも簡単に出来てしまう。

「ロスタイムが少ないこと」と「音作りのために”あの機材はどれにつかおう…”と悩んだり考えたりすることがないこと」というのは、これほどにもストレスが無いことだとは!

そしてもうひとつの驚きが「音の馴染みやすさ」。音のクオリティの話ではない。他の音との親和性が格段に良いのである。かつてのスタジオには常備されていたようなウン億円もする高価な機材を使えば同様な結果を得ることは出来るのだが、それでも様々な制約や限界はあった。しかしDAWという、基本的にはデジタル領域で完結しているシステムでは、その内部での『皆が同じ世界にいる』とでも表現したくなるくらいに、互いの音の親和性が優れているのである。「どうもこの音は馴染まないなあ」と悩んであれこれいじくって考えていたころと比べると、はるかに作業能率も向上した。それだけ曲そのものに集中出来るようになったということが出来るのである。

…もっとも、それと音楽そのものの質とは全く関連性はない。その便利さ等によって失われているものも、無いとは言えない。

 

現在

今現在の制作では、ほとんどがDAW & ソフトシンセで行っている。そして、使い勝手の良さと音の馴染みやすさをライブでも使用したいと思い、Apple MainStageをライブに使っている。ハードウエアシンセの出番は、「こだわり」のある部分だけや、「そのハードウエアシンセでしか出せない音がある場合だけ」という具合に変わっている。

「こだわり」という言葉は実は嫌いなのだが、他の言葉で代用するには説明が必要なのでここでは使うが…。
「こだわり」というのがあまりないというのがソフトシンセの特徴の一つかもしれない。「どうしてもこの機材を使いたい」といような、我欲のようなものが無いのである。もう少しソフトシンセを増やせば変わってくるとは思うのだが…。
(だから、それぞれのソフトシンセの名前を未だに覚えられていない。)

そういう意味では前回「ハードウエアシンセ編」で出てきた機材のほうが「楽器らしい」のである。

 

後記

結局前回同様、一般の方や初心者の方向けの文章にはならず…と。

2014年9月15日のライブでは、前回と今回で書いた数々のシンセ with DAWと、コンピュータで組み上げたシステムで演奏を行います。通常のライブイベントではこれだけのシステムを会場で組み上げることは無理ですから、単独ライブというありがたみを感じています。今後もほかでライブを行う予定ですが、ここまでのシステムでの演奏はおそらく無理でしょう。その意味でも、今回のライブは楽しんでもらえるかもしれません。

 

2件のコメント

  • おっちゃん

    勉強になりました。基本アナログ人間なので、ソフトウエアシンセは今だによう使わんのですが、
    ちょっと興味がわいてきた。
    パソコンの中だけで完結していることに、現物がないためにイメージできない、つながりが理解できない
    という、決定的にアナログな感覚をなんとかしないことには、大変そうだけれども、
    パソコン自体を楽器のように感じ、操作することが出来ればいいんだよねぇ〜

    • 吉田悠二

      そうだね。
      手で触れないというのは、かなりストレスでもあるのは確か。
      最初はつながりが理解できないのだけれど、むしろ一昔前のアナログシステムを覚えるほうが大変だろうと思います。逆に「つながり」を意識しなくていいから。

      ミキサーのモジュールにシンセをインサートするって、最初はすごく変な感じだったのですが、それに慣れてしまうととても直感的に操れるようになる。

      誰にもオススメ…とは言わないけれど、何度か触ってみるとその便利さに「時代は変わったなあ」と思うでしょう。

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